2017年03月17日

なぜ東海道五十三次の名物は柔らかいものばかりか

 仕事でくたくたになって家に帰ってきたときは、あまり噛まずに食べられるものがいいのです。
 そのヒントは江戸時代の旅にありました。

 東海道五十三次の宿場の茶店の名物というのは、どれも揃って柔らかいもの、汁気の多いものばかりだということです。
 たとえば東海道の茶店でもっとも多かったのは、豆腐の「味噌田楽」でした。
 豆腐を串に刺して味噌をつけて食べるものです。


 あるいは東海道中最大の難所と言われた箱根にはたくさんの茶店があり、人気があったのは「甘酒」でした。
 現在でも、江戸時代創業の「甘酒茶屋」が営業しています。
 静岡の丸子では、麦飯にとろろをかけて食べる「とろろ汁」が有名です。丸子から先は大きな峠越えが待っています。
 とろろ汁なら、長い坂道を歩いても胃にもたれることはないでしょう。
 愛知県の刈谷では、かつて芋川村というところでつくられた「芋川うどん」という、名物の平たいうどんがありました。
 弥次さん喜多さんの『東海道中膝栗毛』にも登場するほど人気があり、これがなまってのちの「ひもかわうどん」になったと言われています。
 つまり、体が疲れてきたときには胃も疲れるのであって、そうしたときには噛まずに食べられる柔らかいものが求められるのです。
 その究極が伊勢にある「伊勢うどん」でしょう。極太の麺なのですが、非常に柔らかくてコシがまったくないのです。
 江戸時代には車も電車もありませんでした。みんなひたすら歩くしかありません。おそらく、お伊勢参りのために江戸から伊勢に到着したころには、誰もがへとへとになっていたことでしょう。
 もし、そこで名古屋の味噌煮込みうどんのように硬い麺が出てきたら、食べにくかったと思います。
 疲れているときには噛みたくないということが、よくわかる例といってよいでしょう。
 仕事で疲れた現代人も同じこと。「スタミナをつけよう」などと考えて、固いものを無理して噛んで食べていたら、それこそへとへとに疲れ果ててしまいます。
 胃も弱っていますから、うまく消化することができず、朝になって胃がもたれた感じのまま、気分のよくない目覚めとなつてしまうでしょう。
 夜の食事にそうめん、にゅうめんをすすめるのは、そうした理由があるのです。



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Posted by wing101 at 11:43 │NEWS